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宮の夢空間

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君に花束を贈りたい7

君に花束を7-350 



「なぁ、ジノン。俺はなんでこんなことで悩まなくてはならないんだ」
「知るか。ツケを払えってことだろうさ」
「何のだ」
「いい加減に生きてきたツケ。女性に関してだけな」

「別に女性に対していい加減に接してきたつもりはない」
「だが本気で将来を一緒に考えるとか、したことないだろう」
「ジノンにとってのサムスンさんと出会えなかっただけだ」
「それが誰であろうと、サムスンにならないようにのらりくらりしてきただろうが」
「 … … 」
「で、どうするつもりだ」
「俺が困るのは構わない。だから<誠実に>対処する」
「へえ… 」
「何だ…」
「いや 頑張れよ」
ジノンに生温く励まされはしたが、己の生き方を振り返るきっかけになったことには少々驚いた。
で、俺としては最大限正直な気持ちを伝えることに決めた。


シン・チェギョンをかまって距離を縮めながら、俺は付き合っていた女性たちと関係を終わらせていった。

「 … 本気になった人がいるのね」
ー だとしても君には関係ない
などとつれない言葉は決して口にはしない。
「そうみたいだ」
「みたいって… あなた…」
「僕も初めての経験をしているんだよ」
「まぁ…」
これで察してくれる大人の女性なら、これまでもいい付き合いができていたのではないかと思う。

あるいは…
「シン… 嘘でしょう」
「嘘じゃない。君とはこれでお終りにしたい」
「ちょっと待って。どうして急に」
「僕の中では急でもなんでもないんだ。気持ちよく別れたい」
これですっと引いてくれれば良し。
元々割り切った関係だと告げてあったのだから、だいたいはそれでジ・エンド。

だが、もう少し粘る女性もあった。
「そんなあやふやな気持ちで私を切るの?」
こうなると、冷たい言葉が必要になる。ふぅ…
後味もあまり良くなく、向こうにしても残念なことだろう。
気の重いことだ。

何度かこういうやり取りをして、一人ひとり受け止め方や反応が違うという、しごく当たり前のことを知ることになった。
これまで<付き合う女>という括りでその個を見ず、悪く言えば十把一絡げにしてきたということだ。
ジノンの言うとおり、俺がそのツケを払っていくのは構わないのだが、これを関係のないチェギョンに背負わせるわけにはいかない。
だからと言って自分からできることなどない。
別れた女性たちが冷静でいてくれることを願うばかりだ。

「なぁ ジノン、俺は随分つまらないことに時間を使ってきたんだな」
「自分が意味のないものにしたんだろ。気づけてよかったじゃないか」
「大人の遊びを一緒に愉しんでいるつもりだったんだが、随分失礼な奴だったな、俺」

「シン、一度聞きたいと思っていたんだが、そういう失礼なことをするようになったきっかけはなんだったんだ」
「聞くのか」
「聞きたい。もう過去のことだろう」
「ふん 大昔のことで俺も忘れていたことだ」

嘘だ。
いつも考えているわけではないが、忘れたことはない。
かなわなかった初恋をなかったことにはできないものだ。

ー 高校生の夏休みだった…
俺は初めて他人に話す気になった。
話してもいいという心境になったのも、そういう時期が来ていたということなのだろう。

ー その人は母の知人の娘さんで、年齢は当時で29歳だったかな。
今なら若いと思うが、ひとまわりの年の差はあの頃の俺には大きかった。
掛け値なく美しく物静かな落ち着いた人で、女神のように思えた。
だが、彼女には結婚間近のフィアンセがいた。
手に入らないと思うと余計に欲しくなるものだ。
彼女も間際のマリッジブルーで不安定だったんだろう。
俺は焦燥に近い憧れで青い気持ちをぶつけて、一度は落とした。
いざそうなれば、盛りのついたわんこのように溺れたよ。

笑うな… おまえだってそういう時期はあっただろう。
結末? 俺たちにどんな未来があるっていうんだ。
彼女から俺に別れを告げて、予定通り結婚し外国へ行った。
分別を取り戻した彼女が憎かったけれど、仕方ないのも分かっていた。

「それが心の傷に?」
「どうだろう。よくある話だ。誰だって失恋くらいするし乗り越えられないほどのものでもない」
「夢が持てなくなったとか。女性とか恋愛とか、結婚とかに対して」
「さあな とにかく面倒なことを避けるようにはなったな。俺はよく人当たりがいいと言われるんだが、深く踏み込ませないだけだという自覚はある。つまりはそういうことだ」

「チェギョンちゃんは、おまえの恋愛観では対極にあるタイプだな。だから惹かれるんじゃないか」
「分からん。だが、あの子といると楽しい。それだけでいいのかも知れない」
「ふむ おまえは人生を愉しむふりをして、その実ちっともそうじゃなかったんだよ。人生はいたって単純でシンプルなものだ。心が動くならそれに任せて生きればいい」
「ジノンにしたり顔で言われると腹が立つんだが、サムスンさんと幸せそうだから許してやる」
「俺はサムスンに頭が上がらないからな。おまえもそうなってしまえ」
「ははは あの子にかなわないと思うことはちょくちょくある。計算がないから、俺も作戦が立てられないんだ」
「シン、<おまえは既に死んでいる>…じゃなかった。
<おまえは既に負けている>… だ」
ジノンは<アチョー!>と似合わない物真似までしてみせて、俺を笑わせた。
そして二人で、グラスをカチンと合わせた。
何に乾杯しているのやら。

こんな話をシン・チェギョンにする日が来るだろうか。
あの子ならあっさり聞いてきそうな気もするし、案外気遣って聞かないような気もする。


*****


シン・チェギョンから、珍しくメールが来た。
デートの誘いかと思いきや、相談があるという。
そのメールでも彼女を誂って気分を良くすると、少し溜まっている仕事を急いで片付けにかかった。
俺が女のために早く帰ろうとしたことがあっただろうか。
ふとそう思うと可笑しくなる。

「イ部長、どうされましたか。ご機嫌ですね」
「ん? そう見えるかい」
「ええ とても。何かいいことが待っているとか」
「そのとおり。人は何のために働いているかという命題について考えていたんだ」
「答えが出たんですか」
「いや 出はしないが、楽しく働ける理由には色々あるなと、ね」
「はぁ… で、それは?」
「ふふふ 人それぞれってことさ」
「 ? 」
企画部の部下を煙に巻いて、俺はさっさと帰社しようと精を出した。

ジノンの店に車を停めると、俺はわずかな距離を駆けてドアを開けた。
息せき切って席に近づいてみれば、彼女は大きな口を開けてオムライスを口に放り込んでいた。
幸せそうな顔をしてくれて まあ…
彼女のこういう表情が好きだと思う。

にしても、随分でかい皿だ。
「お、美味そうなもん食ってるな。ジノン、俺も同じのくれ」
「ふふふ シン、それ二人前で作ってある。チェギョンさんと一緒に食え」
ジノンめ、謀ったな。
気の利き過ぎる友とは… ありがたいものだ。

俺がそれにノって彼女の食べかけているオムライスにフォークを入れると、彼女が呆気に取られていて、俄然愉快になる。

「どうした。君が食わなきゃ僕が全部食べてしまうぞ」
「それは… ダメ… まだお腹いっぱいじゃないもの」
「なら、遠慮せず食え」

一つの皿の料理を二人でつつく。
彼女が面映ゆい表情をしているのを目の端でとらえながら、自分もこういうことをしたことがなかったなと甘酸っぱい気持ちになる。
彼女より俺の方が純粋に喜んでいたかもだ。

彼女は俺を呆れたように睨み付けて、ぷんと膨れていたが
それも可愛いのだからどうしようもない。

向こうのカウンターで、素知らぬふりをして珈琲を入れているジノンも楽しそうだ。

continued...


君に花束を8-380 


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